映画が大好きなOLが、映画館で観たりDVDで観たりした映画を好き勝手にひとりごと。ネタばれありです。
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原題:L'annulaire
監督:ディアーヌ・ベルトラン
原作:小川洋子
出演:オルガ・キュリレンコ、マルク・バルベ他
制作:2005年フランス
上映時間:100分
配給:エレファント・ピクチャー


ストーリー:

「博士の愛した数式」の小川洋子による同名小説を原作として、フランス人監督のディアーヌ・ベルトランが映画化した密やかなラブストーリー。

不慮の事故で薬指の先端を失ってしまったヒロインが、ミステリアスな標本技術士との出会いによって、”新しい世界”に足を踏み入れてゆく様を描く。

シャルロット・ゲンズブールやヴァネッサ・パラディに続く”フレンチロリータ”と称されるフランスのトップモデル、オルガ・キュリレンコがヒロインに扮し、その美しい存在感を披露。

ある日の夏、21歳の美しい少女・イリスは、不慮の事故で薬指の先端を失ってしまう。
そのことがきっかけで仕事を辞め、近隣の港町へ引っ越す。
そこで標本技術士の男と出会い、次第に特別な関係が生まれ・・・。





薬指の標本2


小川洋子の小説が大好きだ。数多く読んだ中で、「薬指の標本」は最も忘れられない物語のひとつ。

静かな中に死を漂わせるのが得意な「小川洋子的作品」。

それがフランス映画になるとは、なんというどんぴしゃ感。
今回、再度観た。

この物語、実にフランス映画っぽいなと感じながら読んだのを覚えていたもので。

静かな静かなお話です。

ベス・ギボンスの音楽が実に素敵。ピアノ曲。歌っているものもある。

ささやくようなつぶやくような音楽は、「薬指の標本」にぴたりマッチする。

21歳の主人公イリス(オルガ・キュリレンコ)は、工場で働いている時に機械で片手の薬指の先を切断してしまう。

薬指の標本1


工場で働けなくなった彼女は職を探し、見つけたのが「なんでも標本にする」不思議な仕事。男がひとりでやっている。

写真は、ひとりの少女(17歳くらい)が持って来たキノコ。

試験管に浸されたキノコはキラキラしてゆらめいていて、美しいと感じるイリス。

でもなぜこんなものを標本にしたいのか?と不思議がる彼女に白衣を着た標本技術士の男(マルク・バルベ)は答える。

少女の家が全焼し、すべて失った中、たったひとつ残されたのが、焼け跡になんとか根を張っていたこのキノコだったのだと。

たいていの人は、触れたくない過去を封じ込めるために、ここを訪れ標本を希望するのだと。

そして、たいていの人は標本にしたことで安心し、二度とここを訪れないのだと。

この少女はのちに、再び訪れる。自分のほほにできたヤケドを標本にしてほしいと。

ヤケドを標本に?

了解した男は少女を地下室へ連れて行く。
そして、二度と彼女は姿を見せなかった。

この頃から、イリスは、標本にするということが「死」を意味することもあるのだと悟る。


マンションのようなアパートのような建物の一室と地下を職場にしているので、別室の住人がお茶を飲みに来たりもする。

だけどなぜかみんな物言いたげでじっとイリスの目を見つめる。

これはあとでわかるのだが、標本の仕事を始めた女性たち(といっても受付だけで、実際に標本にする仕事はしないのだが)は皆いつの間にか消え去ってしまうから。

結論から言ってしまうと、彼女達は男に殺されているのだろう。

だが彼は変質殺人者や快楽殺人者ではない。そこで働く女性はなぜか皆、自分自身を標本にしてもらいたいと切望する心理状態になるらしいから。自ら切望する。

イリスもラストシーンで標本記録として自分の指と記入し、作業が行われる地下へ降りて行く。

そしてドアを開け、履いていた靴を置き、まばゆい白い光の中へ足を踏み入れ、ジ・エンド。

薬指の標本3


物語の中で重要な意味を持つのが、男がイリスに贈る靴。

男はイリスに、寝る時以外必ずいつでもこの靴を履いてくれ、と約束させる。

写真では押さえたレトロな色調になっているが、実際は赤い靴。ぱきっとしたポップなトマトレッドではなく、ボルドー寄りの落ち着いた上品な赤い靴。

靴のサイズを伝えたわけでもないのに、驚くほどぴったりイリスの足にはまる靴。

シンデレラのガラスの靴を思い出す。

でもそんなロマンチックなものではなく、いつでもどこでもこの靴を履くことによって、イリスの心が男に捕らわれていくことになろうとは。

男に、という表現は少し違うか。

男の手によって自分の一部を標本にしてほしい、という思いに捕らわれていくと言ったほうが正しいか。

そこにあるのは愛ではない。
支配されたいという欲でもない。

ただ、標本を敬い慈しむ心というか・・・。あれ?こうして文字にしてみると、やはり変態っぽいかも。

フランス映画の独特な雰囲気と、ささやくような語り口調というのは、冷静に考えればおかしいはずの行為も、詩的にロマンチックに仕上げてしまう危うさがある。

まずいまずい、洗脳されかけた。
実話じゃなく映画だから、一時的な洗脳なら良いとしよう。


イリスを演じるオルガ・キュリレンコのピュアな美貌が際立つ作品だった。

オルガ・キュリレンコは、フランスのトップモデルでもある。

素っ裸になるシーンもある。日本の雑誌モデルでは考えられない。

作品の中で、季節は夏まっさかり。

エアコンがない標本接客部屋は、暑くて汗だくのイリス。

細くて長くて白い首に、大きくデコルテが開いた服を着たオルガ・キュリレンコはそれだけで美しく妖艶だ。

小花柄のワンピとか、ふわっとしたシフォンスカートとか、素朴なファッションもかわいかった。


原作にはないシーンもあったけど、ほぼ原作どおり。

静かに静かに、サスペンス的要素とエロティックさを匂わせながら物語が進行する様に、ひっそり息を飲む。

原作は小説だから色も画像もないけれど、映画のほうが色彩がはっきりした印象だった。

アートディレクションにこだわったというから、納得。

といっても、フランス映画のセピア色をまとっているかのようなレトロ感も健在だった。

ワンシーンごとが絵画のように美しい映画。

そして、美しさに見とれつつ、微かに鳥肌たっちゃう映画。

そして、自分だったら何を一生残す標本にしたいか考えずにいられない映画。


薬指の標本(DVD)






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